最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1658号 判決 1949年3月29日
主文
本件再上告を棄却する。
理由
辯護人市原統の上告趣意について。
すべて裁判官は、憲法及び法律にのみ拘束されることは、憲法第七六條第三項の規定するところであり、從つて、下級裁判所の裁判官といえども訴訟事件の審判に當つて憲法適否の判斷をすることができることは當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第三四二號同二三年一二月八日大法廷判決)。また、上告申立人は、法廷の期間内に上告趣意書を上告裁判所に差出すべきであり、上告趣意書には上告の理由を明示しなければならないのであるから(旧刑訴四二三條、四二五條)、當裁判所に差出すべき再上告趣意書において、高等裁判所に差出した上告趣意書の記載内容を上告理由として引用することは適法でない。されば、論旨は採用することができない。(その他の判決理由は省略する。)
よつて、最高裁判所裁判事務處理規則第九條第四項刑事訴訟法施行法第二條旧刑事訴訟法第四四六條に從い主文のとおり判決する。
以上は、裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)